よくあるご質問

Q3

水なし印刷の特長は何ですか?

A3

高品質なことです。

1.網点再現が良い

水なし印刷では、湿し水を使用しないため、網点の周りがにじんでぼやけることがなく、網点がクッキリ再現できます。また、湿し水の影響を受けやすいハイライトの小さな網点も、湿し水の影響を受けることなく、版に形成された網点は忠実に再現します。したがって、高精細には水なし印刷の方が印刷しやすくなります。

水あり印刷 水なし印刷

2.見当精度が高い

湿し水による紙伸びが発生しないため、薄紙の見当精度が高く、版のクワエ尻を引っ張る必要がありません。したがって、オペレーションスタンドの見当調整機構のみで見当合わせが可能となります。

3.色安定性が良い

印刷中は、インキに湿し水が混ざる量によって色の濃度などが変動しますが、水なし印刷は湿し水を混ぜることなくインキのみで印刷を行いますので、濃度変動が少なくなります。

水なし印刷の仕組み

湿し水の代わりに、シリコーンゴムでインキを反発させる

従来の水あり版(右上図)は、アルミ上に塗工された樹脂層にCTPのレーザーが、(ポジタイプの版の場合非画線部に、ネガタイプの版の場合は画線部)に露光され、現像されます。
一方、水なし版(左上図)は水あり版と同等のアルミを使用し、その上にプライマー層、次にCTPのレーザーが反応する感熱層、その次にインキを弾くシリコーン層、最後に現像する直前まで版を保護するカバーフィルムの合計5層構造になっています。
刷版工程では、現像処理する前にカバーフィルムを剥離した後、水なし専用の現像機で現像します。したがって、印刷時にはカバーフィルムを除いた4層構造となります。

図のように、版の断面図を見ると、水あり版は平凸版に対して、水なし版は同じ平版でも平凹版となります。版構造の違いから、水あり版は凸の上にインキがのりますが、水なし版は凹んだところにインキが入り、ブランケット転移されます。

また、インキを反発する仕組みは、水あり版は非画線部に湿し水を保有してインキを反発しますが、水なし版は文字通り、湿し水を使用しない印刷方式のため、水あり版の湿し水部には、塗工されたシリコーンゴム層が湿し水の代わりをして非画線部のインキを反発してくれます。

水なし平版の印刷原理

水あり印刷(左上図)では、インキを反発するために湿し水を使用します。
この湿し水はローラーの中でインキと混ざり、版・ブランケットを介して印刷用紙やフィルムなどの原反に運ばれます。印刷用紙に湿し水が付着すると、紙の伸縮による見当ズレが発生しやすくなります。また、フィルムなどの非吸収原反の場合は、水との相性がわるく画像部のインキがうまく転写しないなどの問題が発生し易くなります。
それに対して水なし印刷(右上図)では、前述の通り、湿し水の替わりにシリコーンゴム層でインキを反発するため、湿し水を用いません。
そのため、水あり印刷での課題である見当ズレは発生しにくくなります。

水なし平版の現像プロセス

水なし平版の専用現像機は、はじめに前処理工程、次に現像工程、その次に染色工程、最後に水洗工程の4つの工程となります。
【前処理工程】 前処理工程は、専用の前処理液が必要となります。45℃で保たれた前処理液がシャワーパイプからローラーを経由して版上に流れてきます。一定時間に前処理液に浸漬することで、CTPのレーザーによって照射された部分の感熱層に染込み、シリコーン層と感熱層の接着力を低下させ現像槽でシリコーンを除去しやすくします。
【現像工程】
次の現像工程では、版進行方向に高速回転するブラシと水で、前処理槽でシリコーン層と感熱層の接着が弱くなった部分のシリコーン層を除去します。
【染色工程】
そして、染色工程では、現像工程とは異なる版進行方向と逆方向に高速回転するブラシと専用の後処理液を用いて現像工程で除去しきれなかったシリコーン層と画線部となる感熱層を染色し、検版性を付与します。
【水洗】
最後の水洗工程では、染色工程と同様に版進行方向と逆方向に高速回転するブラシと水で版面に付着した染色液の洗浄を行ったのちに版を乾燥させて排出します。
水なし平版の現像装置での廃液は、現像工程と水洗工程の排水のみです。この排水は、日本における下水道法に抵触しない数値のため、そのまま下水道に排出することができます。なお、河川には排出することはできません。