環境省は、国内のVOC発生量の9%が印刷インキ(印刷工程)とのデーターを公表している
一方、日本印刷産業連合会(日印産連)は、印刷事業所における安心・安全な作業環境の確保に向け「労働衛生/化学物質管理」を優先テーマとして、関連団体・業界と連携した活動を推進している。
日印産連によれば、「オフセット印刷工場で使用するインキおよび湿し水、洗浄剤には揮発性有機溶剤(VOC)が含まれており、印刷機やインキドクター、廃ウエス容器等から常時有機溶剤が排出されている。特に印刷機洗浄剤には、20から30種類の揮発性有機溶剤(VOC)が含まれている」と、警告している。
日印産連の発行する【第2版「オフセット印刷工場の有機溶剤管理」パンフレット】には、インキ洗浄時のVOC発生量を実測した下記のグラフがある。
水なし印刷では、湿し水からのVOCが無いため、水なしNONVOCインキやUV印刷では、VOCを発生量を計測してもほとんどゼロに近く、VOC削減に有効な印刷方式である。しかしながら、水あり印刷、水なし印刷を問わず、インキ洗浄や印刷機各部の洗浄には、VOCを含む有機溶剤が使用される。
其処で、日本WPAでは、DIC(株)と連携してW2(Water Washable)インキを、推進した経緯があるが、使い勝手に難があり、限定的な利用に留まっている。
8月21日に東レ(株)が公表した「軟包装用水なしオフセット印刷(LED-UV印刷)システムの開発」では、水系のインキ洗浄液を使用する水溶性UVインキがキーテクノロジーとなっている。有機溶剤を使わないため、VOC発生はない。すなわち、オフセット印刷工程がVOCフリーとなる。東レは水溶性UVインキ原料を開発し、インキ製造メーカーへ販売を既に開始している。
印刷分野で成長が期待される軟包装分野での水なし印刷システムを、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から助成を受けて、インキメーカー、印刷機メーカーとのコラボにより完成させる計画である。
当然、水溶性UVインキは、「水なし印刷」でのみ使用可能である。密着性、白色隠蔽度など技術的な難易度の高い軟包装分野で水溶性UVインキが完成した時には、オフセット印刷がVOCフリーになる夢の実現する時でもある。
続報は後日配信の予定。
更に、軟包装印刷はグラビア印刷、フレキソ印刷が主流であるが、溶剤そのもののVOCの発生に加え、溶剤乾燥にも多くのエネルギーが使用されており、水溶性LED-UVインキは、VOCの発生の抑制とともに、CO2の削減にも大きく寄与することになる。