drupaの規模、内容は確かに、他の国際展を断トツに抜きん出ている点が多々ある。よって、drupaは世界各地からの出品者、見学者を集めている。このdrupa2016で大きく変わったことは、最大出品者が地元ドイツのアナログ印刷機系のハイデルベルグ社(HD)から、米国のデジタル印刷機系のヒューレットパッカード社(HP)に入れ替わったことである。どの会社も展示会には見栄だけでなく、ROI(費用対効果)を考えて出品されている。
HPの出展内容は17号館全館を占め、商業印刷、出版印刷、写真加工、ラベル、スリーブ、フォールディングカートン、フレキシブルパッケージングにわたり、56台の機械を並べて実演展示をする様子は圧巻である。主催者はこれがため、特設の排気ダクト装置を敷設したのだ。
HD社は富士フィルムと共同開発したPrimefire106を初披露し、産業用デジタル印刷機への参入姿勢を見せ付ける一方、アナログ印刷機を高度化させ、Push to Stopなる概念のdriverless operationができる新機種群を発表した。これはハイデルベルグ流Indutry4.0なるもので、既存の印刷機の持てる性能は、現下では50%ほどのラインしか活かされていないところ、クラウドを噛ませた高度な自律性能を注入するにより、90数%に高められるとしている。このdriverless operationの機能はPrimefireにも注入しているのだ。
展示会はやはり、開催国のお国の印刷事情が大きく反映されている。
米国の印刷物で大きく占めるのはダイレクトメール、通販カタログ(これは近年、低調化してきた)で、DMの進展からPURL、マーケティングオートメーション(OA)が誕生してきたが、これらのマーケティングの旬の動きはこのdrupaでは限定的にしか見られない。
ドイツ印刷メディア連盟(VDMA)の発表では2015年の出荷高は対前年比2%減の中でカタログ印刷は6%増、ラベル印刷は11%増としている。オフセット印刷の全体シェアは不変でグラビア印刷がシェアを落としているのだ。ドイツ製品は高級商材が多く、説得論調が効くカタログ需要は今もって健在なのだ。
日本の印刷需要で大きな割合を占めるのがチラシである。1000台のオフ輪が健在という国は他にない。チラシがあったため、凸版印刷のシュフーなどが新ビジネスとして立ち上がり、最近ではアプリを活かした渡辺功氏(経産省「攻めのIT経営百選企業」の1社)のコラボレAR、セブンネット(株)のチラシプラスなどのアプリソフトが目に付くようになってきている。
このdrupaでは、フラインドルファー研究所が主導する、Print4.0プロジェクトの創設の動きが出てきてやはり、物作りの伝統と先進性のドイツを感じさせるが、マーケティング面から見ると何か物足りなさを感じる。
欧州でもその存在感を高めているのが印刷ネット通販である。
英国の例をとると、仲間間の印刷も、ネット通販印刷も今日ではTrade Printer(TP)と称している。英国でのTPの売り上げ規模15傑を列挙する。
この中には販促グッズで急成長を遂げている会社もある。最近彼らは力をつけてきて、印刷会社が印刷機の新設計画があるとかぎつつけると巧みにアプローチし、御社用にstore frontをカスタマイズし、仕事のやり取りの利便性を付与するので当方に仕事を出してくれと懇請する例が見当たる。
また、欧州を中心とする国際視点で見るとその規模の巨大さが目に付く。Landaはdruap初日にCimpress社と条件付で20台のS10の契約がなされたといった発表したが、逆を返せば、このような新鋭機を買える先はネット通販会社になってきているのだ。
引き続きdrupa2016(3)レポートへ飛びます。