東レチェコ工場からは亀井取締役、林部長、奥村課長、日本からはJWPA奥副会長、久栄社富田様、事務局佐藤、東レ藤田課長、さらに、EWPAからはDetlef Braun会長, Axel Schwermer副会長の総勢9人にて見学会は開催された。
TTCE(Toray Textiles Central Europe)は、チェコ共和国東部モラビア地方プロステヨフ市に設立されている。同社の資本は60億円。従業員は、280人(繊維220人、水なし版60人)。4組2交代で24時間操業を行っており、現在日本人スタッフは9名である。
またチェコを中心に同心円を描くと、500�では1日、1000�では1〜2日以内の製品陸送が可能であり、非常に立地条件の良いところに製造工場があるのだ。主たる生産製品は、1997年から裏地用途など、2006年から自動車用エアバッグの基布、そして2013年から水なし印刷版の製造がそれぞれ開始された。
見学に先立ち、会議室にて説明を受けることに。チェコ国概要説明に始まり、近年のチェコの取り巻く経済状況などについてスライドを見ながら興味深いことについて解説をいただく。続いて、テキスタイルの製造工程、水なし印刷版製造工程についての説明を受けた。
その中で、水なし版生産工場をチェコに設立するに至った当時の状況については、次のように語ってくれた。
元々2007年に印刷版の断裁加工事業を開始し。これは新聞輪転コルチナ向けに立ち上げたもの。ところが2011年3月の東日本大震災での原発事故の影響を心配したコルチナユーザーからは、放射能汚染された版を継続して使用するにはリスクがあるとの疑念を持たれてしまう。もちろん、放射能で汚染された版ではないが、この一点だけはどんなに説明をして理解を得ようとしてもドイツ人だけが、最後まで頑として受け入れてはくれなかったのであった。さらに、欧州における新聞輪転用の版需要増に応えるために、同年4月、水なし版生産工場事業開始プロジェクトを立ち上げたのであった。現地TTCEは、幸い広大な土地(25ha)を所有し、半分は空地であったため建設用地の準備には全く心配は無用であった。このような条件が重なり、2012年8月には工場建設が始まり翌年8月に完成するのである。ついに2013年11月に本稼働し現在に至っている。お客様を第一に考えた末の素早い判断そして行動であり、コルチナユーザーもとより、ヨーロッパ全域に向けた水なし版の安定供給が、ここにスタートしたのである。
水なし印刷版の製造工場は、もちろんISO9001は取得済みだ。そのアルミ原反については、EU域内から購入。アルミ原反一巻き(アルミコイルと呼んでいる)の重量は、約7トン、最終製品の寸法に合わせて数種類(幅)ものアルミコイルを輸入している。これは、無駄のない製品カット(つまりコストを考慮した切り屑面積の少ない)を目指しているためである。断裁後の製品への合紙については日本から輸入しているものを使用し、製品に自動挿入し出荷を行っている。
説明を受けた後、工場見学がスタート。製造ラインの見学の内一部工程では防塵服を着用し、入室前には着衣の埃を落としてからになる。
アルミコイル受け入れ工程では、巨大なフォークリフトが入口外に待ち構えている。製造ラインでは、CCDカメラにてオンライン品質管理が行われ、不良個所が検出されマーキングされた製品については、更に複数のベテラン技術者によって目視検品を行う。自動検品工程の良否判定基準を厳しくしているために発生するもので、不良品は絶対工場外に出さない・・・その強い姿勢の表れである。このように、水なし印刷版製造工場が立ち上がってわずか半年であるが、岡崎工場とほぼ同量の製品を製造出荷するに至った。準備段階から関わってきた関係者にとっては感慨ひとしおであろう。
一方、テキスタイルの製造工程についても大変忙しい中、社長の菅谷様より直々に工場内を案内していただいた。裏地用途などの製造工程や自動車エアバッグ基布の製造工程では、整然と並んだ自動機織機が稼働している状況はまさに圧巻である。生地の生産から染色まで一貫して行っている工場は、ヨーロッパでは現在当工場しかない。そのため、受注から納品までの素早い対応が取れることにより、ここでもカスタマーとの高い信頼が築かれているのである。
最後に、水なし印刷版工場建屋外には、大型のVOC除去装置が稼働し、従業員そして地域環境に対し十分に配慮された生産が行われていることを付記しておく。