7月30日 我々の申請提出した『水なし印刷による印刷物PCR』が公示され、意見公募にかかることになった。
我々は算定の簡略化を目指したが、既存の印刷PCRと比べての正確性を問われる趣もあり、ここで我々の考えを表明したい。
『水なし印刷による印刷物PCR』による10項目限定のCFP算定の正確性について言及する前に、まずは既存の印刷関連PCRの正確性について考えてみたい。我々が作成した資料「印刷物CO2算定の簡素化について」を用いて;
A)紙のCO2排出原単位の差異によるCFP算定の正確性
B)積上・按分方式の差異によるCFP算定の正確性
について検証してみた。
Aについては、現行のCFP算定では紙の排出原単位は板紙・洋紙を全て一つの種類の紙として一本化しているが、LCA日本フォーラムの紙に関するインベントリデータを見る限り、種々の紙に対応した数値を活用していないことにより、正確性の問題が内在することを知っていただきたい。また、仮に複数種類の紙の排出原単位を活用しても、複数工場の排出原単位が荷重平均されていることを勘案すると、その正確性は完璧には程遠い(完璧にすることが不可能)と言うことを併せて理解しなければならない。印刷製造における最大負荷となる紙の調達にかかるCFP算定の正確性は、この程度の精度しか達成されていないのだ。
Bについては、既存の印刷関連PCRでは積上・按分の何れの方法でもCFP算定は可とされているが,どちらの算定手法でも可とするほど狭い範囲内の誤差に収まっているものではない。一般的には、CFP算定対象物の製造ラインにおけるCO2排出には積上方式が概ね採用されているが、個別の生産設備の電力使用量測定などが困難である大工場や小工場では、製造と非製造を明確に区分けせずに按分方式で算定しているところも結構、多いのだ。同一の製品が、異なる会社により異なる算定手法で計算されることが許されてしまうことで、消費者へのミスリードが誘発されうる懸念を考えると,ここでもCFP算定の正確性が十分であると断言することはできまい。
従って、既存の印刷関連PCRからのCFP算定が絶対値で、『水なし印刷による印刷物PCR』による10項目限定のCFP算定では正確性が担保できないと妄信することこそが、正しい見方ではないと考える。
CFP算定をする上で、その絶対基準というものはどこにあるのだろうか。上記の何れの既存のCFP算定も“正確性”という観点からは問題があるというのが正しい見方ではないだろうか。ここで明確に認識すべきことは、CFP算定では(LCAでは)絶対的な“正確性”を求めることは不可能であるということなのだ。まずはこの点について十分に認識して頂く必要があろう。
どのようにCFP算定を試みても,絶対値とすることが不可能であるならば、短時間で算定が可能となることを志向することをめざすべきではないだろうか。算定項目のなかで、実際に生産に取りかかる前に想像の域を超えない項目や,投入量や稼働時間などの一次データ収集が困難であるような項目を算定対象から外すことでスピードアップを図り,その負担軽減により中小企業を含めた数多くの印刷会社にCFPプログラムに参加してもらうことが最終的な狙いなのである。
CFPが販売増・コスト減に効果を発揮できるのか、そして消費者の環境意識をさらに高めて低炭素なライフスタイルへ転換することのお手伝いができるのか、今こそ英断を持ってその効用を試してみようと思っている。以上をまとめた清水宏和博士の資料をご一読いただきたい。