最近の印刷展示会では印刷機での仕事の切り替えの速さを見せる、迅速立ち上げ実演が大はやりである。事実、このdrupaでも機械メーカーのブースでこの実演が随所で見られた。
ところが版材メーカーの東レが大変意欲的に、印刷人を活気付ける目的と水なしUV印刷のよさをアピールすることで、紙運搬、紙裁き、紙分別の一連の紙扱いの作業をロボットと無人搬送車(AGV)にやらせるまでの画期的な実演を見せてくれた。
今、drupaの話題をさらったLandaの手法とは趣は違い、舞台装置の派手さはなく、日本人の謙虚さが表に出たものだか、しかし、このコンセプトと内容は印刷人に夢を与え、印刷人が単純作業から解放されることは夢でないと、元気付ける実演であった。また、水なし版の小ロット適性をまざまざと見せ付けてくれた。
オペレーターがRapida1064色+コーター印刷機を使って、第1の仕事の作業をあっという間に刷りだし、本刷りにかかり、刷了。排紙台を降ろすと、無人搬送車が下ろしたパレットを受け取りに来る。
オペレーターはその間、2点目の仕事の、琲版、給版、見当合わせ、インキ決めの作業を行っている4分間に、無人搬送車とロボットは化粧立ちのための補助作業をしっかりとやってくれる。無人搬送車は見たことはあるが、紙扱いロボットに圧倒される。そのしぐさは、まるで大男が器用な手つきで行っているように見える。
一定量の紙をつかみ、紙を煽って紙捌きをしてくれる。実に器用だ。聞くとこれは日本のロボットメーカーの介護ロボットを転用したというではないか。デンマークの大学がここまで作り上げたのだからすごい。印刷会社に登場するのも夢ではなかろう。
それにもまし、水なし版だからこそ、わずか3〜4分で仕事を切替、安定した立ち上がりを見せてくれたのだ。UVインキは水ありだと、水とインキのバランスが迅速にはとれず、タイムロスを生じるが、水なしではこの心配がない。
Landaの偉さは我々に夢を与えてくれたことであったが、Toray waterless on demand実演は、これに次ぐ、現場にたっての視点で我々に展望を見せてくれている。派手さこそないが、drupa会場内での印刷実演としては、最高の感銘を与えてくれたデモであったと評価する。
水なしの立ち上がりの早さを強調してくれたすばらしい実演であった。これこそ、日本で「水なし再発見」として見せたい実演である。