(社)日本WPAはこの2年、印刷物に要したCO2排出量を印刷物の片隅に掲示し、消費者にこまめに、息長く訴求する手法を進めてきた。バタフライCO2ロゴは単なる環境ロゴではない。確かに、水なし印刷で刷った証を見せ付けたロゴではあるが、印刷物1点ごとにLCA原理に則り、印刷物排出量計算ソフト、PGGで計算された値、Kg-CO2を表示している。
抽象的な表現でなく、CO2排出量を数値で現すことで、ご発注者・消費者に低炭素化価値・意識を持っていただきたいとの思いでいる。たかが、印刷物かもしれないが、印刷物は保存され、回し読みもされ、テレビのスポット広告のような派手さはないが、じっくりと浸透する伝播効果はある。一時代、ベルマークが流行ったが、これと似た手法を踏襲し、排出量表示を印刷物を通して履行し、ひいては、消費者の低炭素化意識の高揚へつなげる、これこそ印刷人に与えられた社会的使命ではあるまいか。
我々はカーボンオフセットを利用することで、見かけ上の印刷物に要したCO2排出量をゼロにする手法を採っている。同時に、計算結果のCO2排出量を印刷物ごとに表示し、一種のカーボンフットプリント的な運用を図っている。このPGGは印刷PCRに準拠したルールを取り入れ、カーボンフットプリントの値に限りなく近い値を表示してくれる。
PGG-CLAUD版は2月1日より、今までのランタイム版を破棄して、運用実施されることとなった。排出原単位データーは拡充され、実際の仕事によりマッチしてくれるものとなった。また、原単位データーの改定は、クラウドゆえ、事務局・中央での改定がすぐ会員の端末に反映できるようになった。PCRのルール改定が起きても、瞬時に改定の反映ができる。
クラウド化すると、通常はサーバーの費用が発生し、会員はその負担を強いられるが、このスキームでは会員はソフト料も無料、サーバー代も無料で使える便宜を図っている。これは我々の持つ高邁な使命感の発露と申したい。
会員もこれを受け入れ、厳格なLCA計算に励んでもらうべく、このような研修会を持つことになった。
1月20日(金)、13時30分よりちよだプラットフォームでこの研修会が催された。会場には29名が集まり、遠隔地のスカイプ参加者は6名、総勢、35名の参加者となった。会場には何しろ29台のノートPCをクラウドで動かすために、Air Mac装置と、有線LANのハブ装置が用意された。また、スカイプ専用のPCも用意され、福岡、神戸、西宮、福井、豊岡、新見の遠隔地の方はこの回線を通して、受講していただいた。汎用のインフラを使わせていただき、なるべく人の移動によるCO2排出量の発生を抑え、しかも、費用をかけない全国規模の講習方法を編み出させていただいた。ここまでの規模で遠隔受講、クラウド講習を行うのは恐らく、業界では初めてではあるまいか。
冒頭、当協会会長・田畠久義からこの催しの意義、受講者への激励の言葉と挨拶があった。
第1講はPGG開発者の清水宏和氏が登壇し、1)LCAの脆弱性について、2)カーボンフットプリントの将来性について、3)PGG-CLAUDの利活用についての講演があった。PGGはアジア諸国で徐々に広がりを見せてきている状況を報告してくれた。PGGを使った自己宣言型のカーボンフットプリントがアジア諸国での印刷界で生まれる可能性もあるとされた。
PGG開発者の清水宏和氏の講演に聞き入る参加者
ついで、Lデザインの有賀さゆり氏がPGG-CLAUDの操作方法を解説し、実際の操作はPGG開発実務者・Lデザインの渡辺秋男社長がしてくれた。単に計算機能だけでなく、カーボンオフセット証明書も自動発行してくれる実演を見せていただく。また、小口金額の支払いにつき、その代金支払状況管理までクラウド上で双方向で行える機能も備えている。
PC29台、スカイプ参加者6名、ITインフラを駆使し、出張抑制を図った講習会
あらゆる面で間違いの起きにくい、信頼性の高い、仕組みが出来上ったことが確認された。
スタンドアロン版からクラウド版へ移行に伴う問題点、使い勝手の改良点につき鋭い質問が飛び出てきた。これに懇切丁寧に答えさせていただき、一部は持ち帰り検討をすることとなった。
我々は水なし印刷を通し、低炭素化社会の実現に何とか貢献したい思いでいる。