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2008年02月13日

エコから始めるブランディング 日精ピーアール・中村直昭社長インタビュー

2月6日付日本印刷新聞、5135号に以下の記事が掲載れた。印刷界に不透明感の漂う中、時流を見据えて前進を図る中村直昭社長は力強く語ってくれている。従来の印刷商品と異なる、高精細580線スタッカートFMを水なし水洗浄性インキで環境価値をつけてブランディング商品化している姿に敬意を表したい。
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インタビューで語る中村直昭社長
水なし印刷工場を確立
新たな印刷ビジネスに挑戦

新鋭設備の導入で「水なし印刷工場」を確立した(株)日精ピーアール(本社・東京都千代田区岩本町、中村直昭社長)が、その機会をとらえて「環境配慮」の理念を前面に押し立てた、新たな印刷ビジネスに臨んでいる。掲げたキャッチフレーズは「エコからはじめるブランディンク」。環境にやさしい一貫生産システムを構築するとともに、営業社員にも得意先あるいはエンドユーザーに対して、取り組み姿勢を訴えるよう要請。印刷業としてのあり方を全社挙げて挑戦し始めた。一問一答のかたちで、中村社長に考えを問いたい。
-環境保全に関する心構えから。
 中村 印刷業界は、環境保全に関する業界内外の言論や情報を集め、自らメッセージを発信しているが、印刷物の利用者であるエンドユーサーが、その情報をどれだけ正確に知っているかは定かでない。印刷人がどのようなスタンス、ポリシーで自分の取り組み方をエンドユーザーに伝えようとしているか、残念だが見たことがない。印刷を発注する企業も環境保全に関心がない。理解していないために、対応するうえでの動機づけにもなっていない。
-印刷会社側の対応は?
 中村 印刷市場が過当競争の状態になっているが、そのなかでこそ、何らかの差別化をはかる必要がある。エンドユーザーに印刷物をどう見てもらえるか。社会的責任を果たしている姿をみてもらうということも、環境対応の表れだと思っている。
-貴社の取り組みは?
 中村 環境省東京都の方針ては、VOCの排出自主規制の目標として、2010年までに2000年比で32%削減するという指針が出されているが、当社では、石油系溶剤を含まない大豆油インキ、湿し水を一切使用せず、しかも有害な現像液も使わない「水なし印刷」(東レ)を導入することによって、60%削減を達成している。
-次はどんな課題を?
 中村 当社では、削減率を30%上乗せして90%にまで高めたい。印刷業界全体でVOC削減に寄与する必要性を考え、画期的な発明である「W2インキ」(水洗浄性インキ=大日本インキ化学工業)を使用する検討に入っている。
 W2インキは、インキの組成にVOCを発生する物質を含まず、さらに、もっともVOCを放出する溶剤系洗浄剤を使用していない。水系の洗浄剤でインキを洗うことができるので、VOCの放出量をほとんどなくすことができるという画期的なインキだ。水なし印刷でしか使えない。
‐確かに、画期的製品。
 中村 水なしプレートとW2インキを使用した印刷は、水を使う従来の印刷方式と比較して10分の1以下にVOCを削減できることから、環境保全を前進させるための究極の方式だと思う。当社では、これを全国に先駆けていち早く採用して、今年度末までには推進する予定だ。
-FMスクリーンも採用したとか。
 中村 「スタッカート」(コダック社)を導入して、圭ず品質面でクリアできた。数値管理によって最小点で高精細に表現できるので、インキやパウダーの使用量が少なくて済む。ヤレの発生も少なく、生産性が格段に上がる。すでに、社内で印刷する仕事の8、9割をこなすようになった。
-コスト的にはどうか?
 中村 水なし印刷の場合、菊全判の両面5色機で印刷しても、用紙のファンナウト現象を防げるので、見当精度がよく、生産効率も高い。プレートやインキのコストも吸収することができる。水なし印刷は、トータルなコスト増につながらなかった。CTP出力とFMスクリーニング、それに水なし印刷を加えた一貫生産システムは、印刷会社として珍しいのではないか。コストアップを懸念視するより、顧客の好感度の方が大きい。生産効率の向上とも相まって、結果として両立てきたように思う。
-労務面では?
 中村 VOCは、印刷機のオペレータの健康にとっても、好ましくない。クリーンな職場で働いてもらうのは、経営者の責務だと思う。
-企業の姿勢を伝えるには。
 中村 環境対応はコストアップの要因になるとよくいわれるが、そんなことより、一企業として社会に対して明確なメッセージを発したい。得意先から直接、エンドユーザーに伝えてほしいと、営業マンを通じて要請している。営業マンには、プライドをもって営業活動すべきだと、営業会議などを通して鼓舞した。印刷業界に対してもメッセージを送ることができれば、環境対応を強みに仲間仕事のお手伝いをできるのではと期待している。
-全社的にも揺るぎなく。
 中村 紙の使用や電力の消費は致し方ないとしても、印刷方式を無公害にして、製品から出る公害を少しでもカバーしたいと考えている。この印刷方式を採用し推進していくことを、事業方針に盛り込んで邁進したい。 ちなみに当社では、政府が展開する国民的プロジェクト「チーム・マイナス6%」にも、会社として加入し、節電などにこまめに取り組んでいることをご報告したい。
-印刷業界への呼びかけは?
 中村 VOC削減に取り組む当社の努力は、地球規模からすればミクロのようにほんの小さなことだが、こうした印刷方式が業界全体に広がっていけば、公害を出している従来型の印刷方式から無公害印刷方式への転換を促し、地球環境の保護に寄与できることになる。一社一社が少しずつでも取り組んでいく必要があるのではないか。