3月7日,キング印刷株式会社(福島市、伊東邦彦社長)で、富士フイルムグローバルグラフィックシステムと東レ主催で、「水なし+LED-UV印刷セミナー・工場見学会」が行われ、50名に近い参加者があった。 (キング印刷 伊東邦彦社長)
セミナーでは、伊東社長から、水なしLED-UV印刷採用に至る経緯、目的、期待、メリット/デメリット、克服すべき課題、次へのチャレンジなどについて詳細な講演があった。
キング印刷(株)は、1958年に創業し、福島県を中心に事務用印刷、商業印刷で順調に成長してきた。しかし、バブル経済の崩壊を経て、2000年以降、印刷ビジネスの環境が厳しくなる中で、同社の主力印刷であった年賀状印刷(最盛期には1,600万枚の受注)も減少をたどりに、会社変革に迫られていた。そして、2011年東日本大震災と原発事故に見舞われることになった。
「生き残りのために何をするか?悩みに悩んだ」伊東社長の出した結論は、1)パッケージ印刷周辺の小ロット印刷に焦点を当て、パッケージ印刷会社を顧客とする、2)�自分で考えてる行動する社員の育成し、社員の力を向上させる、3)「環境対応」をキング印刷のブランドとし、生産現場の改善と顧客への環境価値の提供 であった。
(所有5台印刷機全台がLED-UV仕様で、クリーンな工場)
これらの方針を実現するため、所有していた15台の印刷機を5台の印刷機に更新・集約し、全てLED-UV仕様で運用している。水なしLED-UV印刷は、KOMORI菊半裁機で2017年8月からテストを開始し、ハイデルベルグ菊全機、及びRMGTA3縦通し機へと展開している。
(KOMORI G426での水なしLED-UV印刷)
ハイデル菊全機では、水なしLED-UV印刷で、菊版28�の薄紙を、一発見当で16,500sphで印刷できた時には、皆が一様に驚いたとのこと。
(ハイデルベルグCX102-4での水なしLED-UV印刷)
水なしLED-UV印刷技術をものにするまでには、数多くの不具合が発生した。エッジピッキング、モットリング、乾燥不良、ヒゲ、おばけ、地汚れ、擦れなどの発生した全ての不具合は,印刷物の現物が残され、原因と対策がデータベース化されている。伊東社長の唱える「成長するオペレーター」の実力を垣間見ることができる。
(水なしLED-UV印刷導入初期の不具合印刷物を共有化)
今後も「環境」をキーワードに、バタフライマークという付加価値を有効に活用し、価格ではないセールスを推進していく。「印刷物の付加価値は、会社の品質」との信念のもと、オープンな工場として、自社技術を公開し、常に探求心を持って技術改革を行い、社内変化を促していく。そして最後に、「水なし印刷導入の秘訣」は、社長の決断であると、伊東社長は締めくくった。