地方都市のA印刷会社はこの地域では22年前から発行・配布しているフリーマガジンの元祖的存在である。月刊生活情報誌はこの都市圏一円、30万戸に毎月宅配で全家庭に宅配していた。この媒体力が評価され、この地域では名門的存在の生活情報誌として見られていた。
月日が経つとともに、この成功に続けと競合誌が出現し、広告料金は上げられない事態になってきた。用紙代、印刷諸資材が上がる傾向の中で、東日本大震災後は、広告の抑制が働いてきている。他方、消費者からは紙のごみ視とする傾向が近年高まってきている。
何とか、必要とする方々が必要なところで手に入れる方法に切り替えられないか、模索する中でラック置き本での配布に切り替えてみる決断を下される。
配布方式を切り替えるには、広告出稿単価の見直しも必要であった。また、ラックの設置場所でも工夫を要した。
ラック置き本型に変えた結果、驚くことに採算性は向上してくれた。30万冊から5万冊への部数減で原価が下がったこと、さらに宅配料が全く不要になってくれたからである。
無論、配布部数の差で広告効果の低下を危惧する趣もあるが、店置きのお店の選択如何で媒体力の差が出ることが分かり、危惧したほどの効果低下は今のところ露見されていない。
特筆すべきことは宅配30万部とラック5万部配布との環境に対する負荷に大きな差が出ていることだ。ラック5万部配布としたことで年間2112トンのCFP(カーボンフットプリント)量を削減することができた。何とこの量はこの都市の中核圏(旧市街)10ヘクタールの土地に杉林を植林したのと同じCFP量の削減効果をもたらしたではないか。
昨年、9月23日に発表された、IPCC第5次評価報告書では�人間活動が20世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的な要因であった可能性が極めて高い(可能性95%以上)、�大気中の二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素は、過去80万年間で前例のない水準まで増加しているとしている。
A社が取り組んだ配布方式の変更による大幅なCO2削減には大変意義深いものがある。