東北地方の2社のVOC計測に出かけた。降りしきる雨の中、計測器を携え、岩手県のA社を訪問した。この工場には現在オフセット印刷機は小森コーポレーションの菊半10色機反転5/5 1台を水なし機として運用した集約の形になっている。工場の大部分には、主力生産機であるフォーム輪転機が設置され、複数台稼働中であった。
測定を開始する。工場の入り口や機械周りでは湿し水を使っていないので、VOC値は低い値に収まっている。
ところが、反転圧胴を手動で洗浄作業に入り、これを測定したところ、何と1000ppmを超える数値が一瞬、現われくる。計測器からは警告音が鳴り出した。洗浄の際、ユニット間のステップを開けると、機内からは熱を帯びた空気が上昇してくる、そしてその熱が圧胴洗浄時のウエスに含まれた洗い油を、どんどん気化させていたのだ。
一般論であるが、版胴・ブラン胴・圧胴の洗浄時にVOC値はどれぐらい出てくるか、さらなる精査を行い、その対処法を考える必要性があると感じた。
工場中央で測定したところ、16ppmと大変低い値を示し働く人にとっては、大変すばらしい環境であり、水なし印刷の運用、換気の良さからきているのだ。
インキ倉庫管理は、大変に整理整頓されていてしかも、VOC濃度は低い。
廃棄物管理では、使用済みウエスをまとめて入れたビニール袋の口が緩く、そこからVOCが空気中に徐々に漏れ出している状況があり、今後しっかりと改善していくように指導させていただいた。
刷版室は印刷室の隣に位置し、2重のドアで厳重に管理されている。更に刷版室の環境改善を求めるならば、隣接する印刷室に比べ刷版室の空気圧を若干高めにしておくほうが良いであろう。扉を開けたとき、空気は常に刷版室から印刷室に流れるようにしておきたいものである。刷版室には、外気を取り入れる空調換気扇を取り付ければ解決しよう。
製造部門のコントロールセンターは、すべてを見通せるように三方がガラス張りで作られている。整理整頓された現場とのコミニュケーションは、相互に確認ができる見通しの良い環境があってこそ、生まれているのだと改めて実感した。