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2013年01月26日

これぞ小企業印刷人の魂だ

光本好雄さんがハイデルベルグ本社で1ヶ月に渡るプレスマンスプールに参加してくれたのが47年前、当時高校生の美少年が、その後、自営のわかくさ印刷(兵庫県西宮市)を興し、今は孫を抱える爺となってしまった。でも、そのドイツで見聞き、経験した原体験が印刷業への執着心を持つ続け、独特の印刷業を築き上げた。
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愛機SM52-4Pを前に光本社長とオペレーターの方たち
こんな世の中だから、うんと儲けることは出来にくい、でも、しぶとく生き延びている。社員7名は全部女性、平均年齢も若い。彼女たちはDTPもこなせるし、印刷機も操作できる。原稿が入ってくると一斉に2階へ上がってプリプレス作業に取り組む。下版されると、下へ移動し、印刷、製本作業にかかるのだ。見事な多能工化の仕組みになっている。
ハイデルベルグSM52-4Pは5年前にGTOVと入れ替えた。GTOVはまだまだ使えるものであったが、光本社長の凝り性でSM52-4Pの機能に惚れ込んで設置した。社長はプリプレス担当のS嬢を徹底的に仕込んで印刷を習得してもらった。機械操作の基本はメンテということを徹底したことがその後の花を咲かせる。
水をできるだけ、絞り、粉を最小に抑えて水あり印刷をする、その結果、普通のカラーものだと15分でひっくり返して裏刷りへ持ってゆけるまでになった。(第1の印刷常識の打破)水なし時でも15分でひっくり返し印刷ができている。
次にチャレンジしたのが水なし印刷だった。経産省のグリーンパーフォーマンス事業に取り組んだのが縁でCFP計算法、後に、PGG計算法を習得してくれ、印刷LCAをこなすまでになってくれた。
世の中の印刷の常識では水あり印刷と水なし印刷を混在させて印刷するのでは非常識としている。ところがここでは水あり、水なしを頻繁に切り替えて使っている。(第2の印刷常識の打破)湿し装置の着脱とローラー上のインキ洗いだけの手間で切り替えはすむ。肝要なことはウエスは水あり、水なしでは分けて使っている。
この機械にはローラー冷却装置はついていない。にもかかわらず、アルポインキを使ったら、5000枚までは地汚れなしで印刷できる。夏場はちょっと工夫して、クーラーは冷やし目、昼休み時は機械カバーを解放して置く、これだけのことで水なしが問題なくこなせる。
封筒の水なし印刷が割合に多いが、封筒を横積みして通している。封かんシールのついた封筒でもシールの巻き込みなしでスイスイ通すではないか。普段は機械は一人操作だが、封筒の時はデリバリーにもう一人付いている。
封筒印刷は割合、再版が多く、水なしは再販にはうってつけと評価してくれる。
ローラーは5年間、巻変えていないがまだ使えるという。ローラー洗浄は洗い油のあと、仕上げ洗浄にローラークリーナーを使っているのがコツという。
たえず、現場の工夫を凝らし、印刷常識に挑戦した結果がこのような独特の印刷作業形態を作り上げたのだ。それにしろ女性社員7人に囲まれた光本好雄さんは羨ましい・・・
印刷の常識を打破して新しい仕組みで運用、光本さんにぜひ、見習っていただきたい。
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封筒の原材料から、生産、廃棄までの工程にかかった温室効果ガス量を算出して表示するLCA算出法を体得し、印刷商品につけてくれる。