印刷会社にとっての印刷機はまさに、生産力の根幹である。いくら、ソフト・サービス化を図るべきとすれど、稼ぎの源泉は印刷加工に負うところが多い。やはり、最新の印刷機は一時代前のものと違い、多品種・小ロットをこなす適性を持ったものでその威力は歴然としたものだ。小森のハイブリッドUV機、ハイデルのアニカラー機、KBA-MetroPrintのGenius機などは、デジタル印刷機に迫る、すばらしい小ロット適性をそなえている。本来は、印刷会社はこのような新鋭機を導入し、より生産性向上をはかるべきであろう。
しかし、諸般の事情で新鋭機導入に踏み切れない向きもある。手持ちの印刷機を改良して、デジタル印刷機に近づけることができないものか? 邪道ではあろうが、生きるすべにはこんな知恵を図らざるを得なくなってきている。
NさんはKBA MetroPrintのGenius機にすっかりほれ込み、何とか導入したい思いでいた。しかし、現下の情勢は導入に踏み切らせてくれない…そこで、次善の策、手持ちのハイデルMOVをデジタル印刷機へ近づける改良工事はできないかと相談を持ちかけられた。
11月30日、京都でユニークな印刷関連装置を作っている、アイマー・プランニング(株)の井爪社長を訪問し、本番類似の仕事数点と紙を持ち込み、同社の印刷室でテスト刷りを行った。設置機はシノハラ菊四歳2色機ゆえ、4色物を上げるテストの時間はかかったが、同社のIPC装置の効用はしっかりと確認できた。
アイマー・プランニングのIPC装置では、つぼを平らにしてインキは元ローラーから均一膜となって吐出され、呼び出ローラーに変わる、分割ゾーン制御(電磁弁で行う)のダクターローラーを挿入することでCTPデーターから受け取ったデーターで、ゾーンごとのインキ加減を調節してくれる。
水なし印刷にして、小ロットものをこなしたが、この機構は小ロットものをこなすには誠に具合が良い。壷を閉めすぎての、インキしまりを起こさなくて済むし、壷から絶えずフレッシュな一定のインキが出るので、印刷条件は大変良くなる。この方式では、刷出し色決めは、30枚内に収まってくれた。水なしにすると、水による変動要因が取れ、インキ濃度の振れも一定に収まってくれる。事実、ロット内のばらつきは濃度0.04内に収まっていた。
既存の機械に手を加え、性能アップを施し、デジタル印刷機へ近づけて行く。こんなチャレンジをしてみたのだ。費用的にも、思いのほか、かからないことが分かり、Nさんは導入への意志を固めた。本来は新台を購入すべきであるが、当面、このような生き方もあり…かな。