脱炭素チャレンジカップで「日本WPA未来へはばたき賞」で顕彰した株式会社ジェイ・ティー・シーを訪問し、代表取締役の市川忠義様、木工職人の正木俊様、業務主任の中馬賢次様と面談をしました。
既報(https://www.waterless.jp/6387/)の通り、株式会社ジェイ・ティー・シーは木製パレットのサーキュラーデザイン化に取り組む企業です。本社は埼玉県狭山市、事業所は山梨県の山間部である大月市柳川町にあり、今回は事業拠点である大月事業所を訪問しました。
代表の市川様に現場の案内と説明をいただきました。
株式会社ジェイ・ティー・シーは木炭の製造会社として2015年に創業を開始しましたが、国内の木炭市場は海外産や安価な製品の存在など厳しい状況でした。競合となる企業も多い状況の中で市川社長は物流で利用される木製パレットの課題に対してのサービスの開発、木炭の価値を高めていく取り組みを開始されました。
国内流通で使用される木製パレットは年間生産量が3700万枚と言われています。パレットは生産者から使用者に販売、使用者が運送会社を通して納品先に製品とともに届けられます。修理の手間や滞留による用地の圧迫、廃棄コストが発生することなど各関係者にとっての課題が起こることが少なくありません。
ジェイ・シー・ティー社は、木製パレットのサーキュラーデザイン化の企業間スキームを作り、自社が適切に管理・保管・修繕し、最大限リユースすることで、木製パレットを継続的に再利用する仕組みへと改変しました。実際に修理工程を見学させていただきましたが、木製パレットを1点ずつ点検し、再利用できるものについては汚れや異物を除去し、破損があった箇所のみ規格にあった部材を交換されています。 本事業は2017年4月から開始、毎月1000枚以上の再生パレットを出荷されています。
そして使えなくなった木製パレットは異物を除去されたのちに木工職人によって木工製品化、木炭化されます。流通を支える木製パレットが形を変えて生活に有用な製品として活用されているのです。本サービスと、全量処分されるワンウェイ運用を比較した際に木製パレットのライフサイクルでCO2排出削減の効果を教えていただきました。1500枚のパレットを用いて大型トラックで100kmの距離を輸送経路とする前提の試算で、約31トン、約85%の削減効果があります。
木工製品を制作する現場を見学しました。荷役で使用された木材を再利用するため木工技術や木を見る目が必要であることをお聞きし、テーブルや建築図面用書類棚、名刺入れ等、木の風合いを生かした製品を拝見しました。
木炭製品については、特殊な窯で煙を出さずに24時間で炭を作る技法で生産されています。パートナー企業や大学と連携する中で様々な用途で付加価値の高い炭製品を販売されています。その代表的なものが水生生物用木炭です。観賞魚や亀など水生生物の水槽の中に入れることで水槽内の健やかな水環境を保つ製品であり、観賞魚を取り扱いされる業者の方からも高い評価をいただいているとのことでした。
また、農業分野での木炭活用に関しても、使用時の効果検証を進められています。大月事業所にある実験農場で様々な野菜を栽培し、栽培した野菜や果物にどのような付加価値をつけられるかを確認されています。
これらの取り組みが評価され、令和6年には埼玉県が主催する、埼玉県サーキュラーエコノミースタートアップビジネスプランコンテストで優秀賞を受賞されました。
事業所を訪問し、社長や社員の皆さんのお話しや取り組みを拝見し、社長を中心に社員の皆さんに循環の輪を創っていくことへの熱意を感じることができました。これからも同社の取り組みを応援していければと思います。