世界文化遺産の天台宗比叡山延暦寺は、東に琵琶湖・西に京都市街地を望む比叡山の山頂近くに位置し、東塔地域、西塔地域、横川地域の三塔地域の総称である。
伝教大師最澄が延暦7年(788年)に「一乗止観院」を創立し、自ら刻んだ薬師如来像をご本尊として安置し、比叡山と号した。これが根本中堂、比叡山延暦寺の始まりである。そのご本尊薬師如来の宝前にともした灯火は1200年間一度も消えることなく輝き続けており、「不滅の法灯」と呼ばれている。1953年(昭和28年)3月31日に国宝に指定された根本中堂は、過去に何度も火事や戦禍によって焼失しているが、徳川三代将軍家光の命によって再建されたもので、完成は寛永19年〈1642年)である。
さらに、根本中堂内は、外陣と中陣・内陣に分かれ、ご本尊を安置している内陣は中陣や外陣より3mも低い石敷きの土間となっており、内陣は僧侶がお勤めをする場であり、参拝者は、中陣からの参拝となる。それにより、内陣のご本尊・不滅の法灯と参拝者の目の高さが同じとなり、「誰もが仏になれる」という法華一乗を表している。
現在、平成28年(2016)年から根本中堂および重要文化財指定の廻廊で約12年をかけての大改修中である。今回の大改修は、「昭和の大規模修理」以来約60年振りの大改修で工事中も拝観は可能であり、根本中堂の屋根の瓦棒銅板の葺き直し、廻廊のとち葺屋根葺き直しなどを特別なステージから間近かに見ることができるのは、改修工事期間だからこそである。
その他、塗装彩色の塗り直しや黒漆の塗り直しなどの工事がおこなわれ、建立当初の姿を受け継ぐ形で実施された江戸中期(宝暦期)の姿に復旧整備されることになる。
今回の大改修について、比叡山延暦寺・滋賀県文化スポーツ部文化財保護課が、ポスターとリーフレットを作成している。印刷には、滋賀県内で創出されたJ-クレジット「びわ湖カーボンクレジット」を採用して、カーボンオフセットされており実質CO2排出量ゼロ(CO2ネットゼロ)の印刷物となっている。今回のびわ湖カーボンクレジットは、滋賀県造林公社が分収造林事業地によるCO2吸収量分で創出したJ-クレジットである。