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VOC測定、削減

2008年10月20日

笹徳印刷がW2インキをテスト、そのVOC値を測定

愛知県豊明市の笹徳印刷の商業印刷部工場を訪問し、インキメーカー、版材メーカーの方々と協調して、10月20日、バージョンアップされた水洗浄性インキ(W2インキ)の印刷テストと同時に、W2インキのVOC放散量測定を行った。
春先にW2インキのリリースバージョンで第1次テストを行ったが、地汚れ、艶不足、インキが堅いことによる着肉不良の難点が露見され、その改良が待たれていた。今回のバージョンでは、メーカー側は一連の社内でのテスト、一部顧客での先行テストを踏まえ、商用として使えるとの確信のもとに提供された品物であった。
テスト版としては、昨年度のある会社の環境報告書を使ってみた。空のグラデーションのかかった模様、軽い写真模様にして、局所に暗部が詰まった車のグレーバランス写真があり、他方では森林模様が描かれていた。これをまず、最初に、通常の水なしインキを使い菊全5色機で印刷する。用紙はFSCと再生紙のミックス品の特殊な用紙であった。工場内は無窓・密閉型工場で気密度の保たれた工場である。
洗油で自動ブラン洗浄をかけた後で、印刷テストにかかったため、洗油の残留VOCが拾われてしまったのは残念であった。昼休みを経て、それが落ち着いた時の測定値は(以下数値はppm)
フィーダー部 32.5、第1胴(から胴) 28.3、第2胴(墨版) 59、第3胴(藍版) 52、第4胴(紅版) 52、第5胴(黄版) 53 という値を示した。
ちなみに、同室内の反対列に配置されていた菊判歳5色機(水なし専用)のVOC値を計測した。
第1胴(墨版) 38.4、第2胴(藍版) 47、第3胴(紅版) 37、第4胴(黄版) 35、第5胴(ニス) 37と言う値であった。 
通常の水なしインキでの印刷を確認してから、比較資料として取り置き、インキ洗浄にかかる。このとき、洗油がローラにかかり、インキ洗浄を行うが、大量のVOCが飛散された。各胴から3000ppm台と言う値が出て、ピーク時の値は4500ppmを示した。
次に、W2インキと入れ替えをはかる。暗部のインキが着肉不良気味に見え、00ワニスを墨インキに若干投入する。微妙な森の色の再現不良が気になり、紅と藍インキに00ワニスを滴下して着肉性を高めた。
W2インキでのVOCを測定する。洗油洗浄の直後に、W2インキを投入して印刷したため、刷り出し当初は、VOCを拾ったが、インキの調肉に当たっている間に落ち着いた値になってくれた。その測定値は:
第1胴(墨版) 44、第2胴(藍版) 50、第3胴(紅版) 46、第4胴(黄版) 36、
この値では通常の水なしインキとW2インキとの優位差が見られない。ただし、W2インキはMethod21から見ると、鉱物油が入っていないため、VOCの発生が本来は少ないはずである。洗油の残留の影響があったと考えられる。
比較のために水系洗浄液WW-1でインキを洗浄し、その時のVOC値を測定した。その結果(以下数値はppm)、
第1胴(墨版) 257、第2胴(藍版) 382、第3胴(紅版) 415、第4胴(黄版) 277、となり、洗油洗浄から見ると1/10以下を示してくれた。
水系洗浄液と言うだけあり、洗浄後の仕上げ洗浄に、水を数滴ローラにかけて残留インキを落としてくれる。
総評としては、艶は以前のバージョンから見ると数段改善された。工場内使用条件に合わせての調肉をした形で出荷してくれると一般水なしインキと同列に扱える、VOC抑制の効果には目立ったものがある、と見た。
このテストの自信のもとに、来年度の環境報告書にはより進化した形を整えたいとしていた。
なお、日本WPAはこの水洗浄性インキの製品化のコーディネーターとしての責務から、会員企業への一層の普及を図るため、W2インキに関するアンケート調査を実施している。
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W2インキのVOC発生量の計測風景