都内の水あり機と水なし機を同じフロア—に設置している、ある印刷工場でVOC測定をさせていただき、水ありと水なしのVOC放散値の優位差を調べさせていただいた。同一室内につき、VOCは工場室内に放散されるため、基本的には優位差の見られない形になるかと思ったが、結果、両方式間に優位差が見受けられる形となった。
この工場では2007年4月に測定したデーターがあり、今回、2008年3月に測定したデーターと合わせて比較させていただいた。(単位はppm)
工場内入口 07/04測定 08/03測定
0 0
印刷機A(水なし) 外国製菊全判5色機
給紙部 73.0 65.2
胴間(藍胴−紅胴) 83.1 70.5
インキ壺(2胴目・藍) 66.6 65.0
ブラン自動洗浄 898.0 —
排紙部 71.5 73.1
印刷機B(水なし) 外国製菊半才2/2兼用4色機
給紙部 66.7 119.0
胴間(藍胴−紅胴) 74.9 —
インキ壺(2胴目・藍) 79.0 83.1
ブラン自動洗浄 — —
排紙部 67.0 71.5
印刷機C(水あり) 外国製菊全判4色機
給紙部 110.0 (運転待機中)
インキ壺(2胴目・藍) 113 —
胴間(藍胴−紅胴) 121〜433(回転による振れ) —
湿し水部(3胴目紅) 787 —
インキ壺(2胴目・藍) 113 —
排紙部 98.0 —
湿し水タンク 471 —
印刷機D(水あり) 国産製菊全判4色機
給紙部 77.9 89.9
インキ壺(2胴目・藍) 113 74.5
胴間(藍胴−紅胴) 145.0 119.0
湿し水部(3胴目紅) 1700 1469.0
排紙部 97.8 73.3
オフセット印刷工場では空調(恒温恒湿)をはかる関係上、換気量はある一定限度以下にならざるを得ない。つまり、室内に発生するVOCはどうしてもこもりがちになる。しかも、VOCは部屋全体に行きわたるため、上の結果を見ても、同一室内にある水なし、水ありの両印刷機の給排紙部での測定値の優位差はそれほどみられない。ただし、水あり機CとDの湿し部からはある一定量のVOCが放散されるが、水なしにはこの要素がなく、水なし機の全体的な数値の低いことがうかがえた。水あり印刷機の悩みとして、能率向上・品質向上を狙うと湿し液にVOCを含んだ添加材を入れることは避けられず、この二律背反を以下に解決して行くかが、課題となっている。この工場は全体的には外気へのVOC放散量は100pp以下に収まっていて環境への配慮を相当に払われていた。
外気ダクトから排出されているVOCは100ppm内に収まっていた
工場内VOC測定の一風景