12月号は水飢饉のことに触れている。世界的にみると上水不足は深刻な問題となりつつある。豪州の政権が、環境前進を表に出す政権交代へなった民意の背景に、乾燥化する大陸の現状が反映されている。水なし印刷は水を使わないところに特徴がある版式なのだ。以下、アーサー編集長の執筆文の一部を紹介する。
水飢饉?
水なし印刷にとっては問題ない
VOCと用紙の節約については過去話してきた。今号では、それ以上のこと、上水の話題に触れる必要がある。人は元来、別の考えを持ってしまいがちだが、上水とは尽きることのない消費財であり、それを今、使い切りつつある。多方面から収集した警告に配慮されたい。
●世界の上水の1%以下(これは世界の全水量の0.007%)は人類が使える分量である。つまり、湖、河川、貯水池や地下水などの上水で、経済的コストで接収できる分を指す。
●水資源の一人当たりの消費量が今のままで上がり続けると、人類は25年以内に利用可能な上水の90%を使い切り、残り10%が他の動植物用となってしまう。(UNESCO)
●世界が今の割合で水を消費し続けたら、2025年までに27億人以上の人が水不足に直面しよう、と国連が警告している。(BBC)
●日々、湖が消えていくとか、井戸が枯れるとか、川が海まで流れないとかを聞かされる。しかし、これらの話は地域の場での話とされた。824ページにわたる中国での水の状況の分析集、世界銀行によるイエメンでの水の状況調査、米国農政部による西部地域の灌漑政策評価などの多くの国別調査が始まって来て、水不足が世界規模のものと掴めてきた。かくして、水の過剰使用の範囲とそれがもたらす資源削減が見えてきた。
●世界はおびただしい水不足を被っている。これは目には見えないが、歴史的にみるとごく最近、急速に進んでいる。水不足の大部分は帯水層からの過剰汲み上げで、これは目につかない。森林火災とか、砂丘侵攻(砂漠化)と違い地下水面の低下とは井戸枯れが起きて自覚される。(Lester R.BrownのPlan B 2.0、地球の緊張の回復と文明の問題)
ゴールドラッシュ型の水接収の激増につき、下段にその経過の概略に触れる。化石燃料の誕生により、第2次大戦後、農業面での「緑の革命」 (特に発展途上国で,穀物増産をめざす)が基礎づけられたが、天然資源を摂取する流れに制限がかかってきた。
●有限の地下水資源の接収は猛烈に行われた。地下水はボーリングとポンプの費用で自由に使えた。より深い地下水の接収へと一種の競争が起こった。地下水面が低下すると農家はより深く掘り、強力なポンプを設置する。これは同時に世界中で起き、井戸枯れが頻発し始め、政府は地下水接収と資源保護に手を付けられなくなってしまった。
●ほとんどの政府は井戸がどこにあるか、井戸の深さなどをしらない。政府はまた、水の水位記録など持っていないが、農家の井戸が枯れで、いつ文句を言ってきたかは知らされている。農家、政府、専門家などは、井戸は永遠に湧き出ると信じている。
●地下水汲み取りはゴールドラッシュにも似ている。つまり、それは手のつけられない富鉱帯なのだ。国際水管理研究所は地下水の全世界の汲み出し量は年間、1,000㎢にあると推定するが、それは持続可能なものではない。我々の時代で利用可能な地下水資源を地球規模で汲みにかかるのは、有限天然資源を1回しか行えないのだ。Executive Intelligence Revie)
前世紀からまたがって、世界的に、水需要は人口増加率の倍の、6倍に増えた。その主たる理由は次のとおりである。
1.人口増加:世界の人口は過去、45年の間に倍増して、今日の出生/死亡比率が続くと、次の50年間で人口は倍増する。この増加は主に、発展途上国であるが、米国の人口(現在は3億人)も過去60年で倍増していて、この60年間で人口は倍増し6億人になると見られる。「この問題を簡単に言うと、上水の再生力は陸地部への降雨量(年間、40,000〜50,000㎢)であるが、世界の人口は年間、8,500万人も増え続けている。
よって、一人当たりの上水の使用可能量は急速に減っている。」(Blue Gold)水の専門家は、人口は今の3%に過ぎなかった2,000年前、その時の地球上の上水量以上に増えていないのだ。(Imasar)
2.農業:世界で、約70%の上水が農業用に使われている。ほんの一握りの国が石油資源を持っていいて、他の国にはない、水も同じことである。乾燥のパキスタンでは上水の97%は農業に使われ、中国(全世界の20%の人口を有するが、水は7%にすぎない)は87%である。
3.工業:世界的に見て、上水の20%は工業に使われる。だんだんと、工業が農業のシェアーをとっている。この消費社会は過度に増大してくれ、製造物は全て水を消費する。地下水面が縮んでいくのが、買い物へ走ると言われている。
4.家庭使用:世界の上水の10%は私的使用に使われている。「平均的な米国人は1日、150ガロン以上の水を使っている平均的なアフリカの家庭では1日、5ガロンほど使っている。」(water.org)
一般的に水の使用をやめさせるには、使用者に消費の規制拘束をかけるのがよいが、工業化する農業にはかけにくい。
印刷界での不必要な浪費
世界の水供給が消耗していく中で、Presstek DIとか東レ版のユーザーは貴重な一滴の消費材を使わない事実は、水なし印刷が水あり印刷に対する大きな利点として浮揚してよう。
世界には40万社の印刷会社があるが、水なし印刷会社はごくわずか、3,500社かそこらである。残念ながら世界の水ありオフセット機の全体の水使用量は算出しかねる。と言うのも、機械サイズ、型式、日々使用の判別の正確なデーターを持ち合わしていないからだ。
とは言え、ある事例を引用すると、印刷界で使う水の量は相当あると言えよう。その量を知るべく、個々の枚葉機、オフ輪機での使用量を当たってみた。28インチ(71cm)の5〜6色機で月間、833〜1,000リッター(220〜264ガロン)を使う。それ以上の例ではオフ輪で月間、2.5万ガロン以上使い、これは5.5×11mのスイミングプールを満タンにしてくれる。
むろん、凝った、高価な湿し水循環装置があり、湿し水を処理して貯めてくれるが、これらが全世界でどれぐらい使われているかわからない。製造工程の一部で上水を使っている産業には、特に、乾燥地帯の地域では環境保全論者とか、規制者の批判の標的となりかねない。
オーストラリアから米国南東部にかけ、消費者は個人の水使用には貯水するように強いられているのに、印刷のような工業が何の抑制もなく使っている。仮に消費者が水なし印刷では水を使わなく、水廃棄汚染もないと知ると、憤慨の声が上がろう。
Mayland州のChverlyにある、Mosaicのような水なし印刷会社は発注者に向けて水なし印刷は水資源の保護に役立っていると、注意を促している。再製紙と水なしで行った、単純なDMチラシ、10,000枚では一人1年間の水使用量分*を節約してくれたことになる。さらに、湿し水添加剤からの環境上の有害物質の放散をも取り除く。
これらは全て滅亡、暗黒、死、絶望への話なのか? 水なし印刷の限りではそうではない。
実質的な差別化製品として、版では東レとPresstekが出してくれ、機械ではKBA、PresstekそれにCodimagが水なし専用機を出してくれている。
水なし印刷会員様、水なし印刷では印刷で水を除去していることを忘れないでいただきたい。
*World Health Organization(世界保健機構)、World Bank(世界銀行)、米国国際開発庁は一人当たり、1日に20〜40lの水を薦めている。水の大部分は健康と生活の充実度を増進する。