大気汚染防止法の施行に当たり、環境配慮を前面に掲げる我々は自らを自問自答してみた。
印刷現場で発生するVOCの実態を我々自身が掴んでいないのではないのか。
東京都のVOC対策アドバイザー制度を活用させていただき、会員企業の印刷現場におけるVOC放散値の計測に当たった。その結果、よくぞ今まで無頓着にして環境への配慮を意識しないで、印刷現場の仕事をしていたかと反省させられた。
文星閣では水あり印刷階と水なし印刷階があり、両者のVOC放散値を測定したが、「水なしでは水ありに比べ、VOC発生量が60?80%削減されている」と言う判定を都からいただく結果となった。
また、水洗浄性インキ(W2インキ)とW3洗浄剤を使うと洗浄作業時に発生するVOCを大幅に削減できることも判明した。
よって、自分達の啓蒙を意識したVOC計測事業に着手することとし、会員には無償で測定サービスを実施させていただくことにした。文祥堂印刷、久栄社、六三印刷、東芝ドキュメンツ、橋本確文堂、高桑美術印刷での計測の結果、水なし印刷では印刷室でのVOC発生量は至って低い値になっていることが判明した。
今後は印刷現場での環境改善のあり方まで踏み込んで会員サービスをはかって行きたい。
バタフライロゴの不正使用の問題が発生し、その対策として会員の英知を集めた結果、上場会社に向けてバタフライロゴの正しい使い方、水なし印刷の環境優位性のダイレクトメールを協会名で出してみた。これには会員間でデザインコンペを行い、優秀作品を採用する自己啓発策をとったが、結果、上場会社筋には「水なし印刷のVOC発生の抑制効果」に感心をいただいた。この手法は今後も継続したい。
今年は協会が設立され、4年を終えたが、業界での一定の認知もいただけるようになった。日印産連「オフセット印刷サービス」グリーン基準の改定が行われ、このグリーン基準に水なし印刷が1項目として明示され、水なし印刷の認知度が上がったものとなってくれた。
恒例のセミナー・見学会は8月に岩手県奥州市の六三印刷様で、10月の全日本印刷フォーラムに合わせて、防府市の大村印刷様で「ワンランクアップの印刷」とした、より高い技術目標を掲げて実演の勉強会を行った。
12月の見学会は新日本印刷・羽田工場で行われ、参加者制限を加える盛況裏に開催することができた。
2007年はIGAS展が開催されるが、第2回世界水なし印刷大会を開催し、世界市場でのバタフライロゴの一層の認知、水なし印刷の特殊原反、特殊加工用途なる新しい高度な価値付加と言うハードルにも挑戦してゆきたい。
日本水なし印刷協会(日本WPA)
事務局長 五百旗頭忠男