第11回セミナー見学会は10月19日、全日本印刷フォーラムの協賛行事の一環として防府市の大村印刷で開催された。当初の40名枠を大幅に超える70名の参加者を得て盛会裏に開催された。実演の圧巻は、大村印刷の技術陣が編み出した、480線FM印刷を水なしで披露してくれた。21μドットを再現するには、砂目のない版で水を排除した方式で、印刷した方が網点再現はより優れたものとなってくれる。
桑原課長はある有名デザイナーのポスターの仕事に挑戦した。水なしAM175線でカラー印刷を行ったが、主版の紅の色がクライアントの納得を得るものに再現してくれなかった。そこで薄赤、薄藍をFMスクリーンで重ね追い刷りをする。この手法を通し、水なし印刷の高い見当精度を証明できよう。また、AMにFMでの刷り込みを行う重ね追い刷りの手法を確立し、クライアントの高度な納得を得る高品位の実技を確立する。
この実演を通し、メリットとしては、1)重ね刷りによるモアレは全く出ない、2)印刷中の色ムラはなく、品質は安定している、3)印刷物に深み、遠近感が出る、などが確認できた。
しかし、デメリットとしては、2工程印刷になり、コスト高になることだ。
桑原課長は添付資料を基に、次のようにサジェスションを披露した。AMの網点の概念だと、印刷されたインキは紙の繊維の谷間に集まり、濁りを発生させる。ところが、FMの網点だと小さいがゆえに、転移量も少なく、ムラとして認識されない。つまり、粗面紙に印刷しても発色の良さが保てるのだ。したがって、300線FMより、480線相当FMを恐れずに使用するほうが良い。実際に試験した結果、300線の方が印刷は難しかった。ブラン残りはするし、色のにごりは出る、ドットゲインの量の調整が困難であった。
ドットゲインの調整はシンプルな形のほうがこなしやすいことが分かった。
世間で言われている常識は疑ってみる必要もあるのだ。
資料・水なしFM印刷は粗面紙を克服する
日本WPA・依田会長の挨拶
水なしでのFM重ね追い刷りにの実演と刷り本掲示
桑原課長による「水なしでのFM重ね追い刷り」の実演説明に聞き入る参加者