文祥堂印刷様でのVOC計測の推論
2月6日(水)に(株)文祥堂印刷様は東京都VOC対策アドバイザー制度のもとで、アドバイザー寺田先生、及び東京都環境局のご専門職員の方2人様のご助力をえて、工場内延べ、200余箇所のVOC発生量を計測した。
その目的は、全印刷機を水なしにして環境配慮型印刷を推進している同社が、VOC発生及び排出状況を把握(測定)し、今後のさらなる対策・改善点の助言をいただくことにあった。
その測定結果の概要につき、簡略に報告させていただく。
工場周辺(外溝):VOCの排出はされてなく、問題はない。換気能力が通常の印刷会社より高いもので、この点は評価できた。また、吊り下げカーテン+シャッター扉により、VOCの工場外遮断を図っている工夫は評価できる。また、残肉インキは紙ペール缶に2重シールをして引き渡しをされているが、この方式ではVOCの発生が見られず、すばらしい処置法である。
地下1階印刷室:室内のVOC充満量は20?60ppmと少なかった。印刷中では若干のVOC増量変化が見られた。この範囲で納まってくれるのは、室内換気が十分に行われているものと断定する。ただし、四六全5色機(9号機)で洗い油を使ってブラン洗浄作業をすると、最大900ppmまでVOC値は跳ね上がる。ローラー洗浄の局所では5200ppmまで一時、上がった。菊全4色機(1号機)でFCブラン洗浄液を使ってブラン洗浄をすると、560ppmまで上がっている。ウエス入れはバケツで密封されているが、蓋をあけた一瞬は6000ppmを示す。落ち着いた頃でも500ppmを示す。蓋をすると30ppmと下がってくれた。蓋の励行は有効な手段である。インキ缶からのVOC発生は思いの他低いものである。
1階印刷室:工場内定点でのVOCは20ppmと非常に低い。菊半裁8色機(8号機)のユニット間でも昼食時の計測では25ppmと大変に低い。昼休み後、測定をしたら不思議なことにさらにこの値が下がってくれた。これは工場内の喚起能力が一段と働いた要因と考えられる。菊半裁5色機(6号機)のユニット間のVOC量は30超えppmであった。菊半裁4色機(5号機)でローラー洗浄をすると最高1400ppm、ブラン手洗い洗浄では860ppm、圧胴洗浄では600ppmを示した。ウエス入れは蓋の開放の一瞬は4700ppmとなり、落ち着くと570ppmと下がった。
調肉室はさしたる問題はない。テスター機の洗浄時では350ppmとなる。1階印刷室外のVOCはなかった。
2階製本室:さしたる問題はない。
3階DTPルーム:基本的にはVOCはないように見えたが、134フロン、リグロリン(フィルムクリーナー)を一旦使うと、室内のVOCが100ppmとなり、印刷室より高い数値が出るではないか。製版室はクリーンにして、密閉性を保っていることが、薬品を使うとあだとなっている。フィルム現像機からはVOCの発生はない。
今日の印刷インキからのVOC発生量は少ないものである。インキのVOC対策は究極近くに来ているのではないか。
水あり印刷ではIPA入りの湿し水(代替エッチ液にもVOC成分が混入)での連続回転運転をするため、印刷室内でのVOC量は上がってくるが、水なし方式ではこの要因が全くないのだ。さらに、ローラー、ブランケット、圧胴、版の洗浄作業で印刷機を回転させて洗い油をかけると、途端に高いVOCが発生してくれる。洗い油を使うことによるVOC発生をどのように取り除いていくかが今後の我々の課題となろう。一部で唱えているように、FM化することでVOC削減が目に見えて図れるというものではない。無現像製版が大幅なVOC削減に繋がるのでない。オフセット印刷会社で優先すべきすべきは洗油対策、湿し水対策で、これこそVOC対策の大きな要因なのである。それにも増し、製版室でのフィルムクリーナー、フロン剤の代替対策こそが急務なのはなかろうか。我々は今まで2印刷会社での計測を通して、湿し水を一切使わないこと、洗い油に変わる「水洗浄性洗浄液(W3洗浄液)」により印刷室を大幅にVOCクリーン化できるという確固たる自信を持つに至った。
8号機(菊半裁8色機)でのVOC測定
カーテン+シャッターでVOCの室外の放散を遮断
ローラー洗浄時のVOC放散量測定
圧胴洗浄時のVOC放散量測定
残肉インキは2重シールして廃棄、VOCは放散されない。
フィルムクリーナーからの異常な数値のVOCを検出、これがため製版室にVOCが漂う。